2025.10.27

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RAGは検索が9割?  — RAGとマルチエージェント—

■RAGは検索が9割?  — RAGとマルチエージェント—

 

社内ナレッジを確実に活かすには、検索が9割──RAG導入で最初に押さえるべきポイントです。
近年、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索強化生成)が注目される背景には、
自社の専門知識や社内ルールを正確に反映するAIチャットボットの需要があります。
当社が扱うCopilot Studioは、RAGに加えマルチエージェント構成を手軽に構築・実行できる環境を提供します。

RAGはユーザーの問いに対し、まずナレッジベースから回答に必要な断片を検索し、
それをLLM(大規模言語モデル)に与えて応答を生成します。
したがって「何を引けるか」が応答品質の大半を決めるため、検索精度とナレッジの整理が非常に重要です。
ここが整っていないと、期待した回答が得られず「生成AIの性能が不十分に見える」原因になります。

検索精度向上には、メタデータ付与、文書の分割粒度最適化、埋め込み(ベクトル検索)のチューニングが有効とされてきました。
これらは、RAGの仕組みの中にある検索システムを制御できる場合に有効な方法であるため、RAGの簡易作成ツールでは難しいかもしれません。

 

もう一つのアプローチとして、マルチエージェントを用いてRAGの精度を高める試みがあります。
当社でも就業規則などの自社ルールを答えるチャットボット作成によって検証を進めています。

概要は次の通りです。
まず問い合わせ内容を解析して「どの専門エージェントが回答に適切か」を選定し、
選ばれた各エージェントにはそれぞれ専門領域に特化したナレッジ文書を与えます。
ナレッジが大量にある場合、一つのエージェントで処理すると適切でない検索結果のばらつきが問題になりますが、
エージェント分担により対象知識を絞り込めれば、応答の一貫性と精度を高められる可能性があります。
これにより、幅広い質問に対しても適切な回答を返すことができるようになります。

生成AI以前のチャットボットは、回答のフローを作成することで固定的な回答に導くことが中心の仕組みでした。
これに対して生成AIを使ったRAGシステムは、細かな回答フローを構築しなくても生成AIが質問を分析し、
さらに専門エージェントを用意し、必要な文書を参照して回答させるというところまで発展してきました。
この構築の容易さが生成AIチャットボットの普及に寄与していると感じます。

さて、RAGシステムにおいて与えたナレッジだけを使用し、事前学習済みの知識を直接使わない場合でも、
LLMは事前学習で獲得した推論能力を用いて応答します。人が本から答えを探して回答するのと似ています。
これに対して、人が学習し、頭の中で統合されている知識を使って回答するのと類似しているのが「ファインチューニング」です。
こちらはアップロードした文書を学習済みの知識と同じように扱うことができます。
RAGシステムと比較するとメリットも大きいのですが、時間・専門知識・高コストが伴い、手を出しにくいのが現状です。

生成AIを社内問い合わせ回答業務などで活用する場合、
まずは小さく始めることのできるRAGシステムによるPoC(概念実証)で、
回答の品質やユーザ満足度を検証することから始めることをおすすめします。

 

☎ 052-688-0521 株式会社マイクロリンク 営業部