2025.05.26

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時代の転換点としての生成AI (2) : 生成AIと正しく付き合うために

■時代の転換点としての生成AI (2) : 生成AIと正しく付き合うために

 

LLM(大規模言語モデル、いわゆる生成AI)と対話していると、多くの人が「知能」や「意識」のようなものを感じると思います。
しかし、実際にはLLMには意識も意思も存在せず、あくまで大量のデータから統計的にもっともらしい言語表現を生成しているにすぎません。
それでも、私たちがそこに意識や知能のようなものを感じるのは、私たちの認知の仕組みに由来する自然な反応かもしれません。

なぜ大量の文書を学習させると「知能のようなもの」が現れるのか?
LLMは、Transformerという深層学習の一種を用いたモデルで、これは一部で「人間の神経回路網に着想を得た」とも説明されます。
ただし、Transformerと人間の脳の仕組みは構造的には大きく異なります。
にもかかわらず、LLMが生成する出力には一貫性や創造性が見られ、私たちはそれを「知的」と感じることがあります。

この感覚が生じるのは、LLMが大量の人間の言語データからパターンを学び、文脈に応じて極めて自然な応答を返すからです。
これは、人間の知能と似たような出力結果を得られるという意味では面白い現象ですが、
それが人間の知能と本質的に同じかどうかは、現時点ではまだ明らかになっていません。

こうした技術の進展が予測不能な側面を持つことから、一部の研究者が「LLM開発を一時的に停止すべきだ」と主張した背景には、
技術的な不透明さに加えて、社会的影響や安全性の懸念も含まれています。

 

なぜ「忘れること」が難しいのか?

LLMは、一度学習した情報を個別に「忘れる」ことが難しいとされています。
これは、人間のように意識的に特定の記憶を抑圧したり削除したりする機構を持たないためです。
人間においてもトラウマ記憶のように意識的に消したい記憶を忘れられないことがありますが、LLMにおける「忘れられなさ」はそれとは仕組みが異なります。
たとえば、企業機密や個人情報のようなセンシティブな情報を一度学習してしまうと、後からその情報だけを消去することは、現在の技術では非常に困難です。
LLMは、学習した知識を数百億〜数千億のパラメータに分散的に保持するからです。これは「アンラーニング」と呼ばれる課題で、
今後のAI活用を進める企業にとっては見過ごせないリスク要因です。
ただし、LLMには「RLHF(人間のフィードバックによる強化学習)」や「システムプロンプト」などを通じて、望ましくない応答の出力を制御する技術も存在します。
これはあくまで出力の調整であり、モデル内部の記憶そのものを「忘れさせている」わけではありません。

このように、LLMが学習内容を直接は忘れられないという点において、ある種の「固定された記憶」のように見える部分があり、
そこに人間の記憶との類似性を感じることもあるかもしれません。
ただし、その仕組みは根本的に異なることを理解する必要があります。

 

AIに“知能”を見る私たちの錯覚

生成AIはあくまでも確率的な言語生成モデルですが、
人間がそれに「知能」や「意識」を感じてしまうのは自然なことです。
ただし、それらの感覚は人間側の認知的錯覚に近く、モデルの内部にそれらが本質的に存在している訳ではありません。
このことは、生成AIを便利な道具として使いこなす上での理解に役立つことでしょう。

LLMの発展によって生まれる「分かっているように見えるAI」は、私たちの知能理解や記憶の定義を改めて問い直す契機にもなっています。
今後の進展においても、こうした哲学的・技術的問いは重要な視点として残り続けるでしょう。
また、生成AIを便利な道具として使いこなす上での理解にも役立つことでしょう。

 

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